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診療所ニュース


さくらの便り

睡眠薬をください!

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所長 石井照之

「はい、どうぞ」という訳にはいかない。どの薬でも、一度に大量に服用すれば危険ですし、その危惧のある人には注意が必要です。アルコールと共に飲ませて犯罪に利用されることだって起きています。ならば、正しく使えばよいかと言えば、やはり薬はリスク。看過できない副作用と依存性があります。睡眠薬は、夜のトイレに起きた記憶がない、転倒してしまう、日中まで効果が残り支障をきたす、などの副作用のみならず、内服が不要になったと思って止めてみると不眠が再びおこってしまい、やめ難くなってしまうのです。睡眠薬には長期連用で薬物依存に陥る懸念があるのです。こうなると、やめるために数か月間かけて処方を工夫せねばならず、患者・医師双方に根気が必要となり、厄介です。睡眠薬の処方には手を出すな、とまで極論を述べる先生もおられます。昨今、副作用がほぼ無いうえに、中止の弊害のない睡眠薬が6年前から処方できるようになりました。睡眠リズムを整えて、自然な眠りを誘う薬なのですが、それ以前の睡眠薬のガツンと効く感じがないので、なかなか患者さんに受け入れられず、広まりません。

そうと聞いても、眠れないものは眠れない、どうしてくれる、とおっしゃるのはごもっとも。眠れない理由や原因疾患があれば当然にその対処、治療が睡眠治療となります。頻尿のため夜中に目覚める原因が前立腺肥大ならその治療薬が、咳で熟睡できない原因が気管支喘息ならその治療薬が、横になると息が苦しくなって眠れないのが心不全ならその治療が睡眠を得るための治療になります。アトピー性皮膚炎なら皮膚が痒くては眠れない筈です。不眠の訴えに、うつ病や不安障害などの精神疾患が隠れている時は、睡眠薬の処方のみで事足りとはならないので、注意せねばなりません。

これら疾患とは別に、誰にでも起こりうる、たまたま眠れない日が続くときを経験します。睡眠薬に頼らないための方法をいくつか挙げてみましたので、「睡眠薬をください」とおっしゃる前に実践してみて下さい。眠れなかった理由がわかるかもしれません。

           睡眠をとるための心得

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@   朝の光を浴びましょう。私たちは毎日24

間周期で生活を繰り返していますが、睡眠のサイクルを決めている脳にある体内時計はこれより少し長く、放っておくと実生活とのずれが生じるため、24時間に正しくリセットしておく必要があります。その方法は朝の「光」を利用する方法です。雨や曇りでも、外の光は室内よりも強いので、窓を開けて外の明るい光を見ることで体内時計は前進し、睡眠サイクルが整います。

起きる時間はなるべく変更せずに、仕事のない日だからと言って寝過ごすのは睡眠サイクルを狂わせます。

A眠くなるまで寝ない。熟眠感を得るには深い眠りが重要です。5時間程度の睡眠なのに十分な睡眠が得られる人がいる一方、それより長く寝たのにまだ眠り足りない人がいます。長さよりも深い眠りの方が熟眠感には重要なので、この深い眠りを得るために、眠くなるまで床に入らない事。15分しても眠りに落ちない時は床から出て眠気を待てとアドバイスする専門医の話を耳にしたことがあります。睡眠の長さは人それぞれなので、睡眠時間の長さにこだわりをもたないようにしましょう。

B入浴を利用する。入浴はリラックス効果があるだけではなく、入浴後に身体の深部体温が低下してゆく過程で眠りが誘われるので、入眠前に入浴し、身体のほてりを取ってから床にはいるようにしてみて下さい。冷たい飲み物は、従ってNGです。

C昼寝はとりすぎない。時間は30分までとし、できれば午後3時ころまでにとるようにして、夜の深い睡眠と眠りを誘うのに守りたい習慣です。

テキスト ボックス:  D眠る1時間前は、スマホは見ない。スマホ、パソコン、液晶テレビの光は脳を覚醒の方向に強めるのでなるべく見ないようにする。

Eアルコール、カフェインは良くない。アルコールは寝つきを良くすると言いますが、浅い眠りとなって睡眠の質を悪くすることを知りましょう。夜遅くは避けて、ほどほどにいたしましょう。アルコールの利尿作用で夜間にトイレに立つのも良くない点です。コーヒーなどのカフェインは眠気飛ばしに利用されるくらいですから、避けましょう。

F部屋の照明を落とす。赤い暖色系の照明の光は眠気を誘うそうです。できれば入眠の1時間前から、間接照明が良いそうです。

それでも眠れないときに

テキスト ボックス:  まだありますが、これくらいにとどめて、それでも眠れない時はどうしましょうか。ネット検索に、こんな方法も効果的と有ったので、ふたつほど紹介します。

「アリス式睡眠法」。布団にあぐらをかいて座る。目を閉じてゆっくりと呼吸をする。何も考えない。目に浮かんできた最初の映像を見続ける、とにかく見続ける。少し眠気が襲ってきたら床に入る。これを繰り返すそうです。

もうひとつは「米軍式睡眠法」。第二次世界大戦中、パイロットの睡眠が確実にとれるように開発した方法で、1981年に初めて公開されたとありました。顔、あご、舌、目の筋肉をリラックスさせる。次に肩を落として交互に腕のリラックス。次は息を吐いて胸のリラックス。次に両足のリラックス。次にイメージ想起に移って、「カヌーに乗って湖にいる」「上空には青空」「真っ暗な部屋で黒いハンモックに揺られている」のをイメージする。「考えるな、考えるな、とにかく考えるな」と声に出してつぶやく。これを6週間にわたって励行すれば、96%の2分以内の睡眠達成率とありましたから、事実なら驚異的です。

アリス式睡眠法も米軍式睡眠法も、共通するのはリラックスと無思考です。試してみるのは無駄ではなさそうに思いました。

私は、眠くなるまで床に入らない習慣が幸いしているようで、不眠症はありません。それでも眠りに落ちない時は、さして重要でない予定を思いめぐらすとか、思い出せない人名や事物の名称をあれこれ思い出そうとしているうちに、朝を迎えています。これでも眠りに落ちないときには、このアリス式、米軍式を試してみようと思います。

縁起の良い初夢は、眠らないことには見られませんし。皆様も、どうぞ。